資格よりも大切な「船の安全性と許可」を徹底解説！
「亡くなった家族の遺骨を海に還したい」と海洋散骨を検討される方が増えています。業者を探し始める際に、最初に浮かぶ疑問の一つが、「その業者さんは、きちんと資格を持っているの？」という点ではないでしょうか。
結論から申し上げると、「海洋散骨を行う」という行為自体に、国が定めた特別な資格や許可は必要ありません。これは、散骨が法務省の解釈に基づき「葬送の一つとして節度をもって行われる限り、遺棄罪には当たらない」とされているためです。そのため、誰でも「散骨代行業者」として事業を始めること自体はできてしまいます。
しかし、この「資格不要」という事実にこそ、依頼者側が業者選びを慎重に行うべき、非常に重要なポイントが隠されています。「どうしたら良いかわからない…」という方のために、本当に確認すべき「船」に関する安全性と適法性について、詳しくご説明します。
第1章：散骨業者に資格が不要な理由と、船の「適法な運航許可」の重要性
海洋散骨のサービスは、「遺骨を海に撒く」という葬送行為と、「お客様を船で安全に海まで運ぶ」という海上運送行為の二つが組み合わさって成立しています
1-1. 散骨行為そのものに「資格」は不要
前述の通り、散骨行為自体は、行政が定める特別な免許や資格を必要としません。このため、極端に言えば、散骨に関する知識や経験が乏しい個人でも、「海洋散骨業者」を名乗ることができてしまいます。そのため、業者を選ぶ際には、散骨の作法や遺骨の取り扱いに関する倫理観、そして実績を総合的に判断する必要があります。
1-2. 船を運航し「人を輸送する」ことには厳格な「許可」が必要
一方で、お客様を乗せて海に出る「船の運航」に関しては、話が全く違ってきます。お客様（人）を乗せて対価を得て輸送する事業は、法律（海上運送法など）によって厳しく規制されています。
ここで求められるのは、「資格」ではなく、国土交通省の地方運輸局などが交付する「不定期航路事業の登録・許可」です。
• 無許可の危険性: 過去には、この許可を取らずに、一般的な「レンタルボート」や「遊漁船の許可」のみで散骨を行っていた業者がいたという情報もあります。これらの船は、人を安全に輸送するための設備や保険体制が整っていない可能性が高く、非常に危険です。
お客様を乗せて運行する船は、安全性が最も重要です。散骨業者を選ぶ際も、その業者が使用する船が、「人を運ぶ」ための適法な登録と許可を得ているかを徹底的に確認することが、依頼者の安全を守る上で最も肝心なことなのです。
第2章：優良業者が必ず満たしている「船」の法的要件
海洋散骨業者がお客様を安心して乗船させるために、法律上、満たすべき要件は多岐にわたります。信頼できる業者は、これらの要件をすべてクリアしています。
2-1. 不定期航路事業の登録
お客様を乗せて港から港へ運ぶのではなく、特定の場所（港）から出航し、特定の目的（散骨）を終えて同じ場所に戻る形態の運送を「不定期航路事業」といいます。海洋散骨はこれに該当するため、国土交通省にこの事業の登録または許可を受けている必要があります。
この登録を受けることで、船の構造、設備の安全性、運航管理体制、そして旅客に対する賠償責任保険の加入などが厳しくチェックされます。
2-2. 定期的な検査（船舶安全法に基づく検査）
車に車検があるように、人を運ぶ船には、「定期的な検査」が義務付けられています。
• 船の構造、機関（エンジン）、航海用具、消火設備、救命設備などが、国の定めた安全基準に適合しているかを専門の検査機関が確認します。
• この検査を受けているからこそ、船の安全性が保たれ、荒天時の避難や万が一の事故に対応できる最低限の設備が整っていると言えるのです。
2-3. 特定教育訓練
船を運航する船長（小型船舶操縦士）や乗組員は、旅客を安全に扱うための**「特定教育訓練」が必要です
• この教育訓練は、旅客の救命方法、緊急時の対応、旅客への適切な情報提供など、安全な旅客運送を行うために必要な知識を習得するためのものです。
• ボート免許を持つ個人がレジャーで船を出すのとは異なり、不特定多数の「お客様」の命を預かるプロとしての自覚と技能を証明するものです。
第3章：失敗しない業者選び！無許可・不適法な業者を見抜くチェックリスト
「どうしたら良いかわからない…」という方は、以下のチェックリストを使って、業者が「人を運ぶプロ」としての許可をしっかり持っているかを確認しましょう。
優良な海洋散骨業者は、これらの情報を隠さず、積極的に公開しています。逆に、事業登録番号について曖昧な回答をしたり、使用する船が「友人のボート」や「レンタル船」などと説明されたりした場合は、その業者への依頼は避けるべきです。
�記事全体のまとめ
海洋散骨業者を選ぶ際、散骨行為自体に特別な資格は必要ありませんが、お客様を乗せて運航する船は、国土交通省の厳格な「不定期航路事業の登録・許可」を受けていることが絶対条件です。この登録があることで、船は定期的な安全検査を受け、船長は特定安全講習を受講し、旅客に対する賠償責任保険にも加入していることが証明されます。安全な海洋散骨を実現するため、「どうしたら良いか分からない」と迷ったら、必ず業者のウェブサイトで「事業登録番号」や「安全管理体制」を確認し、適法な許可を得た信頼できる業者を選んでください。
記事作成：海洋散骨会